Contact、Paradeに続く、歌手活動再開後3枚目のアルバム。
今までは一単語だったアルバムタイトルが本作では「Sing All Love」という複数のワードのものとなった。新しい次元への挑戦という、茅原実里・スタッフ一同の決意の表れでもある。
アルバムタイトル通り「愛」を歌った14曲。
男女の愛、家族愛、友情の最上級としての愛など、様々に解釈される「愛」というキーワードを14編の歌詞とメロディに乗せて茅原実里が歌う。
本作の特徴はいくつかあるが、14曲のうち、ほとんどがアグレッシヴかつ熱い楽曲となっている点に注目していただきたい。今までの、女神的・神秘的なムードが強かった茅原実里楽曲からさらに発展し、ロックテイスト溢れるナンバーや、その曲名の通り炎が今にも吹き出しそうな強さを感じる曲など、これでもかというほどの「強さ」を感じる楽曲が並んだ。
「純白サンクチュアリィ」や「Contact」から茅原実里を支え続けている作詞の畑 亜貴、こだまさおり、そして作曲の菊田大介も継続して参加している。畑 亜貴・こだまさおりの、作詞世界の引き出しの多さに驚いていただきたい。歌詞の大切さを実感出来るアルバムとなった。そして、菊田大介の恐るべき進化。一見、出し尽くされたかに思われたサウンドワールドに新たな地平をもたらした。無限に広がることが出来る地平である。リードトラックである「Final Moratorium」にそれは顕著に表れている。
シングル「PRECIOUS ONE」の作曲/編曲で、茅原サウンドに深みを与えてくれた藤末 樹も本作に参加。「PRECIOUS ONE」から茅原実里を知ったファンの方にはぜひ期待していただきたい。
新たに参加した作家には、小高光太郎、オオヤギヒロオ、渡辺和紀、そしてあの齋藤真也がついに茅原実里楽曲に参加。鉄壁の布陣となった。
そして、茅原実里自身がついに作詞を担当した。「sing for you」というタイトルから連想される通り、暖かみのある、茅原実里という人間をそのまま歌詞にしたかのような楽曲。アルバムの最後を飾るにふさわしい、清らかな感動がある。
また、本作は茅原実里の歌唱力が圧倒的にレベルアップしていることに気付かされる1枚でもある。数多くのレコーディングとライブを経験してきたことで、深みのある「声」を獲得した。スタッフが彼女の声をクリスタルボイスという呼び方をしていた時期から数年、本作での歌声から感じられるのは「人間の体温」である。透き通るような声質は今までに、今の彼女の歌声は「体温」を感じさせる。ファンの皆さんをはじめとして、自分に関わってくれる人たちへの愛情が溢れんばかりに歌声に宿っている。感情がこれほど伝わる歌声にはそうそう出逢えない。茅原実里の歌声は何度も繰り返し触れていたくなる、感情の波動なのである。
間違いなく、現時点で茅原実里史上最高のアルバムが生まれた。
限定盤として発売されるブルーレイディスク付き、DVD付き商品には、2009年8月に行われた、茅原実里