歌:あがた森魚
作詞:あがた 森魚
作曲:矢野 顕子
発売:2009-04-14 15:05:24
決して海の底には歌はない
けれども海の底には歌がある
いつも夏だけれど真珠は群れをなす
やがて潮騒のあの砂浜にとどくほどにも・・・
生まれた島では戦争で
いつか行く島では永遠の氷河期で
そのつかのまの海の底
決して そこには歌はない
決して そこには歌がある
父さんの絵葉書の少し読めない文字
に・じ・ん・で・る
この真珠飾りの庭の都市
百合を飾った蓄音機 黒い悪魔の音の函
だだだだ だだだだ 進みます
父さんはね この海の底が大好きだ
今こちらでは大博覧會
もうすぐ二十世紀も終わるからね
こちらもやたらに忙しい
KUN・・・・・・ KUN・・・・・・
つぶやくように あわ吹いて
ぶあついレンズに現われて
うろこの紳士も洗われて
ヤッボー ヤッボー と エンジンも
(アナウンサー)
みなさ~ん!
今日は海底 大博覧會を催します
サンゴのメインゲートからお入り下さ~い
父さんの絵葉書・・・ ところどころ讀めない
も・う・み・え・な・い
真珠飾りのケーキの庭は
ザリガニくはえた潜望鏡 黒い怪しい音の函
だだだだ だだだだ 走ったもんさ
廣場ではエッフェルタワーやケーブルカー
凱旋門をくぐりぬけ
もうすぐこの海の旅も終わるからね
こちらもやたらに忙しい
KUN・・・・・・ KUN・・・・・・
泪をふいたら あわ喰って
ぶあついレンズで見つめあい
うろこの紳士も遠ざかる
ヤッボー ヤッボー とおさらばと・・・
ヤッボー ヤッボー とおさらばと・・・
(手紙)
それじゃ、皆んなもお元氣で !ASdios!
父さんも元氣・・・ !Gracias!
現在のバンドネオンは歯切れのよいリズムも刻むし、派手な變奏
もやってのける。それだけ演奏技術が発達したのだが、初期の
樂團のバンドネオンはむしろ鈍重で、悲しげに泣くように歌って
いた。この悲しさ、暗さが、「悲しみを歌うことの喜び」に醉いた
がるラテン氣質に大きな魅力であった。
樂天的で、血の氣の多い、明るい音樂だったタンゴは、バンドネ
オンの参加によって、メランコリックな色彩をおび、表現の幅がひ
ろがって成熟にむかった。バンドネオンがタンゴを變えたというよ
りは、そのように變わりたかったタンゴがバンドネオンを求めてい
たのである。
バンドネオンはタンゴの聲となった。
ブエノスアイレスは、ほかのどこにもない樂器をもつことができ
るようになった。バンドネオンはブエノスアイレスの聲でもある。